レンタルあやちゃん始めました

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猫と、わたしと、たこ焼きと。(ショートショートその⑥)

 

世の中にはたまに、信じられないことが起きる。

 

 

あれは私が高校2年生の2学期だった。

私の通う高校のすぐ近くに、元気で体の大きなおばちゃんが1人で営む小さなたこ焼き屋さんがあった。ここは学校から近いのになかなかみんな知らなくて、穴場なのだ。狭い店内にはテーブルがふたつ。

普通のたこ焼きも絶品だがそこで私が1番好きだったのは、もちべーっていうもちとチーズとベーコンの入ったたこ焼きで、外はカリカリ中はふわっふわで超絶美味しい。

学校で嫌なことがあると、私はよく1人でもちべーを食べた。

そしてここにはアメリカンショートヘアの美形の看板猫がいて、私は勝手にタケシと呼んで可愛がっていた。

「あら優ちゃん!また嫌なことあったの?」

「おばちゃんのたこ焼き食べると元気でるから!ね、タケシ?」

「タケシって呼ぶの優ちゃんだけなのに、この子ちゃんと反応するのよねえ。

ねえ、そういえばどうしてタケシなの?」

「んーなんとなくタケシっぽいから!おばちゃん、今日は明太マヨにする!」

 

 

いま思えば本当に意味がわからないのだけれど、学生の頃ってえ?そんなことで?ってことでいじめの標的にされたりする。

私の場合、【体育のバスケの練習試合で、パスを回さなかった】という理由でクラスメイトのほとんどから無視をされてもうすぐ1ヶ月が経つ。

私はそれを家族にも先生にも相談できずにいた。孤独って、たぶんずっと続くと人をだめにする。

そろそろしんどいなーと思いながらもちべーを食べていると、涙が出てきた。私は食べ終わると泣きながら趣味の絵を描いた。誰にも言ったことはないのだけれど、将来は絵を描く仕事がしたいなあと思っている。私は泣きながらタケシを描いた。

タケシは私の顔を不思議そうに見つめて、それから静かに寄り添ってきた。

猫って気まぐれだけど、鋭いし優しいなあと思う。

「なぐさめてくれるの?タケシは優しいね」と言って頭を撫でるとタケシは気持ち良さそうに目を閉じた。

 

 

次の日、私のクラスに転校生がやってきた。

小柄な男の子で、顔は中性的で美しかった。名前をタケシというものだから、私はつい笑ってしまった。

人間のタケシは偶然か必然か私の隣の席に座った。

まだ教科書がないから、机をくっつけて授業を受けた。

教科書の落書きを見て、タケシは言った。

「この猫は?」

「ああ、行きつけのたこ焼き屋さんの猫なの。可愛いでしょう?お利口さんで優しい子でね、この子もタケシって言うんだよ」

「優ちゃんは絵が好きなんだね、才能あるよ」

「え?あ、ありがとう、、」

 

それから私とタケシはよく話をした。

クラスの人たちからは無視されたままだったけど、タケシが絵を褒めてくれるから、私は授業中も休み時間もいろんな絵を描いた。

もうすぐ文化祭で憂鬱だったけれど、タケシに勧められて文化祭のポスターの絵のコンクールに応募してみることにしたのだ。

そして全校生徒の応募の中から私の作品が選ばれて、私の絵がポスターになった。

するとみんな嘘みたいに、ちやほやしてきた。

「これ優ちゃんが描いたの?すごい!」

「絵の描き方教えてほしい!」

「ねえ似顔絵とかは描けないの?」

私は一気に人気者になった。

人間って信じらんねえなって思うけど、過ごしやすくはなった。

あれ?そういえばタケシを最近見てない。

 

私はクラスの子に聞いた。

「ねえ、タケシってさ風邪でもひいたのかな?」

「タケシって?」

「え?こないだ転校してきた」

「え?誰も転校なんてしてきてないよ、優ちゃん急にどうしたの?」

「あれ?あ、夢かも、、さっき授業中寝ちゃって」

「えー!優ちゃんうけるー」

 

 

全然うけない。

そんなわけない。そんなわけない。

私は確かにタケシと過ごした。

どういうこと?タケシどこ行ったの?

私は上履きのまま飛び出した。

 

 

「おばちゃん!」

「優ちゃんが1週間以上顔出さないことなんて今までないから心配してたのよ、どうしたのそんな急いで?」

「おばちゃん!タケシは?」

「それがね、あなたこないだたこ焼き食べながら泣いてたときがあったでしょう?

あの日の夜から帰って来ないのよ。もしかしたら、死期が近づいてたのを知ってたのかもしれないね。でも優ちゃんは特別可愛がってくれてたから、あの子幸せだったと思うよ」

 

 

私がわんわん泣いていたらおばちゃんがもちべーを焼いて出してくれた。

私はタケシがくれた優しさと踏み出す勇気とこのときのたこ焼きの味を一生忘れないと思う。

 

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